【書評】『戦略PR 空気をつくる。世論で売る。』

同じカテゴリーの商品でも、
売れるものとそうでないものがある。
 
その違いは一体どこにあるのか。
 
商品の良さは大前提であるが、
大きな違いを生み出しているのは、
それを「買いたい」と思わせるような空気(カジュアル世論)の存在である。
 
今回読んだ、
『戦略PR 空気をつくる。世論で売る。』本田哲也著)
では、そのような空気をどのような生み出せばよいかを解説している。
 
 
 
1)カジュアル世論はPRによって生み出される
 
本書では上記のような「カジュアル世論」は、
PRによって作り出されているという。
 
そもそもPR(Public Relations)とは、
自己PRなど、「良さを伝える」といった意味でしばしば使われるが、
PRの役割は
 
商品などの「良さ」や「魅力」を伝えるだけではなく、
周囲との関係を良い感じにして、組織の目標達成につなげることである。
 
「周囲との関係性を良い感じにって…」と感じる方もいるだろう。
簡単に言えば、その良さや魅力が相手にとってどんな役に立つのか、
それを受け取りやすい形で伝えるということである。
 
 
 
2)PRと広告との違い
 
1ではPRについて説明をしたが、
PRは広告としばしば混同されがちである。
 
そのため、本書では3つの違いについて言及をしている。
 
<PRと広告の違い>
1)広告枠を買うか買わないか
→PRは広告枠は買わずに、
 メディアに取り上げられることで、世の中に広がっていく。
 そのため、かかるお金は広告よりも断然低い。
 
2)信頼性が高いか低いか
→広告は良い部分しか宣伝していない場合がほとんど。
 しかし、PRはメディアによって客観的に判断され、
 「良い」と思われたもののみ報道されると認識されているため、
 信頼性が高い。
 
3)コントロールしやすいかどうか
→広告は伝えたいメッセージを自分たちの思い通りに発信ができるが、
 PRの場合、世の中に発表した情報が注目されるかどうか、
 どのようにとらえられるかは、メディアにかかっている。
 
つまり、カジュアル世論を生み出すためには、
PRをして、「こんなふうに皆の役に立つ!」と広めていく必要があり、
そのPRを広めるためには、そもそもメディアに取り上げられなくてはならないのだ。
 
メディアに注目されるためには
消費者の関心を最大化させるようなテーマを選ばないといけない。
 
本書ではそのためにも、
自分事化(レセプティビティ)が重要だと紹介されている。
 
 
4)人々が受け入れやすいカジュアル世論をつくるために
 
<テーマ設定編>
 
カジュアル世論の役割は、消費者に気づきを与えて、買う理由を生み出すことである。
上記のような「自分事化」を生むためにも、
どんな観点から消費者に「これを買う必要があるよ!」と気付きを与えるか、
そのテーマ設定が非常に重要である!
 
テーマ設定のコツは、
「自分が言いたいことではなく、世の中皆が興味を持っていることから引っ張ってくる」
ことだと著書は言う。
 
その作り方の5つのSTEPと、欠かせない3つの要素は以下のとおりである。
<5step>
1商品に関係しそうな「世の中の関心事」を探す
2商品の便益を、世の中や消費者の関心に合わせて翻訳する
3その2つを結び付け、テーマを設定
4テーマをニュースにするための材料を用意
5テーマを広げるための具体的なPRプランの策定
 
<欠かせない3大要素>
おやけ
 →みんなが知っていること
ばったり
 →口コミなどで偶然であったものであること
●おすみつき
 →専門家や、大衆によって評価されていること。
 
 
5)最後に
 
商品が売れるためには、カジュアル世論が必要だが、
それはあくまで「ほしい」と思わせる空気作りであり、
買ってもらうためには、もうワンプッシュ必要。
ここで広告が生きてくるのである。
 
 
カジュアル世論を形成するために最も重要なのがテーマ設定だ。
 
結局、商品の便益を、
どう世の中や消費者の関心に合わせ翻訳するかで
結果は変わってくると考えられる。
 
本書ではその具体的な考え方までは言及されていないものの、
「PR」というものを学ぶ上では、欠かせない一冊であるため、
ぜひ多くの人に読んでいただきたい。
 
 
【まとめ】
①商品が売れるためにはカジュアル世論を作ることが必要。
②カジュアル世論では、商品の魅力を、消費者の関心に合わせ、
 どう消費者の生活に貢献するものなのか伝えることが重要。
 

「プラットフォームブランディング」

今回、マーケティングの勉強として読んだ本がこちら!
 
川上慎市郎・山口義宏著
 
「ブランド」と聞いたときに、
多くの人は何を思い浮かべるのだろうか。
 
企業のロゴ、
商品・企業のイメージ(appleならiphone)
売っているお店の雰囲気(スターバックス)など、
とてもバクゼンとしたものが私の頭の中には浮かんできた。
 
ここで例としてあげられた企業は
どこも「強いブランド」を持っているといえる。
 
これらの「強いブランド」と、そうでないものの差は一体どこにあるのか。
その1つの答えを本書は提示しているといえる。
 
 
その答えこそが、「ブランドのプラットフォーム化」である。
 
 
【ブランドのプラットフォーム化とは?】
少し説明を加えていこう。
現代では、商品・情報が世の中にあふれており、
市場が飽和状態にあるといえる。
 
そのため、
<企業にとっては…>
他社との差別化や、その商品だけの価値を作っていく必要があるが、難しい
<消費者にとっては…>
似たような商品から、どれを選ぶかは他社からの客観的な情報によって左右される
という状態にある。
 
そのような状態の中、
商品単体で得られる価値に及第点を出す人はいるかもしれないが、
それ以上の感情は生まれにくい。
 
一方、ネットで口コミ評判の高い商品を買った時や、
その商品を買うと一部の利益が社会貢献に使われるなどの付加価値があると、
最低限の要求を満たす状態から、より満足した状態に近づけるといえるだろう。
 
そのような「より満足した状態」を目指すために重要なのが、
この2点である。
(1)商品、企業コンセプトへの共感(自分ゴト化)
(2)ユーザー同士のコミュニケーションを通じて価値を生み出す
 
そして、本書では(2)のコミュニケーションを生み出す場を
プラットフォームとして定義している。
 
つまり、ブランドのプラットフォーム化とは、
商品の価値のみに頼るのではなく、
商品の購買、使用過程も含めた顧客の体験価値を、
ユーザー同士のコミュニケーションを発生させることによって高めていく
ということである。
 
 
【プラットフォームってどう作る?】
本書ではこのプラットフォームを作る流れとして、
以下の順序を提唱している。
 
①生活者の感じている「大きな欠損・非効率性」を発見する
②そこで提供する体験の価値を絞り込み、最大化する
③体験価値を高めるためにパートナーを引き込む(プラットフォーム化)
④周辺領域へプラットフォームを拡大する
 
このようにしてプラットフォームを作ることで、
顧客同士のコミュニケーションを生み出し、
それによって体験価値を高めようとしている。
 
しかし、どのような企業のどのような商品でも
プラットフォームを作れば、強いブランド、売れる商品になるわけではない。
 
より強いブランドを作るためには、
生活者主語の価値を支援し、
その実現に貢献してくれる味方であることを想起させることが重要である。
 
本書では、その手法として
短期的なキャンペーンや企業のFacebookページ運用などが挙げられている。
 
それこそがプラットフォーム化であり、
本書の最も重要なポイントではあるのだが、
ここでひっかかるのは、そもそもそこに参加したいと思えなければ、
プラットフォームを作っても意味はなくなってしまうということである。
 
そのため、最も重要なのは
その商品、企業は消費者に対し何を伝えるか、
もしくは、何を伝えられるのかという点であると考えることもできる。
 
そこでキーになってくるのが、
上で「より満足した状態を目指すための重要ポイント」としてあげた
(1)商品、企業コンセプトへの共感(自分ゴト化)
だと考える。
 
この商品を使う(消費する)ことで、
こんな理想の未来を、あなたもその一員として一緒に作って行きましょう。
 
その理想図に多くの人が共感し、
そこに自分が存在するイメージを抱くことで、
人は興味を持ち、購買行動へとつながるのではないだろうか。
 
そしてそれを浸透させる場としてプラットフォームがあると考えられる。
 
つまり、プラットフォームを作ることで、
顧客の体験価値を高めていくことは
現在の飽和した市場の中で非常に重要ではあるが、
そこに引き込むための「理想とする未来」の自分ゴト化が、ポイントである。
というのが私の考えだ。
 
理想とする未来の自分ゴト化と言葉でいうのは簡単だが、
それを実現するのは難しい。
 
また、それも似たような商品の場合、
差別化という課題が出てきてしまうため、
結局「これはこんなにいい商品なんだ!」と
企業が一方的に魅力を語り、消費者には伝わらないという状況に陥る可能性もある。
 
どのように自分ゴト化させていけばよいのかは、
今後自分が考えていくべき課題であるが
ブランド力が強いところはどこも、理想とする未来のイメージ図がはっきりと伝わってくるため、
そこからヒントを得ていきたい。
 
【まとめ】
①企業はユーザー同士がコミュニケーションをとれる場を作ることで、
顧客の体験価値を高めていくべき。
②ただし、そのコミュニケーションに入るきっかけとして、
その商品を通して実現したい(理想とする)未来のイメージを顧客と共有し
自分ゴト化をしてもらうことが重要。